スマホが手に届くところにあるだけで、どうしても、スマホが気になります。
現在、塾では、スマホの持ち込みを全面禁止にしていますが、
しっかり集中して勉強に取り組むには、
スマホが簡単に手の届かないところに置いておく必要があります。
そんな研究を北海道大学の河原純一郎特任準教授らがしたそうです。
実験方法
実験参加者をランダムに2つのグループに分け、
1つのグループはスマホを、もう1つのグループには同サイズのメモ帳を
パソコンのモニター横において、モニター上に書かれている文字の中から、
標的となる文字を探し出すまでの時間をはかったそうです。
実験結果と河原先生の考察
スマホがモニター横にあるグループの方が、明らかに、作業効率が落ちたそうです。
モニター横にスマホを置いたグループでは、文字を見つけるまでに約3.7秒かかったのに対し、
メモ帳を置いたグループでは、約3.1秒で見つけることができたそうです。
また、この数字には、当然ですが個人差があり、スマホの利用頻度別に応じて、差が生じたそうです。
スマホの利用度が高い人と、低い人では、
高い人の方が、低い人の方が、より顕著に作業効率に影響がでたそうです。
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かかった時間(秒) |
スマホ |
メモ帳 |
全体 |
3.7 |
3.1 |
スマホの利用率が高い |
3.2 |
3.0 |
スマホの利用率が低い |
4.2 |
3.1 |
要旨のグラフより読み取り
実験の結果から、画面を消した他人の携帯電話であっても、
ただそばに置いてあるだけで注意が損なわれることがわかったそうです。
特に、普段は携帯電話を使わない人ほどこの影響が強い傾向が見られたそうです。
こうした効果が起こる理由として、2 つの原因を河原先生はあげています。
一つは携帯電話が置いてあるだけでも注意を自動的に引きつけること、
もう一つはそのような注意の引きつけと,それを無視しようとする働きに個人差があることです。
これらの2 つの要因が合わさって、携帯端末が置いてあるだけで注意の広がりに偏りが生じ、
身の回りに注意を向ける行動が阻害されると結論付けています。
すなわち、スマホが置いてあるだけで自動的に注意が向いてしまい、
見つけるまでの時間が長くかかったと考えられます。
しかし、この効果は使用頻度が低い人に強く起こり、
スマホを普段からよく利用する人は、メモ帳を置いても、スマホを置いても、
ほとんど時間に差がないことが判ったそうです。
また、スマホを普段からよく使用する人は、スマホの置かれた側の文字に限れば、
気がつきやすいこともわかりました。
すなわち、スマホの存在を無視したり注意する機能に個人差があることがわかりました。
研究結果からの感想
それでは、これらの研究結果をもとに、S-Lab独自の考察していきます。
今まで、電源さえ切っておけばOKという風潮がありましたが、本当にそうでしょうか?
という問題提起ができる研究結果になっています。
たとえ電源を切っていたとしても、そこにスマホがあることにより、
注意力がそがれることが証明されました。
利用頻度との関係は、普段からスマホを利用している人ほど、
スマホがあることが普通になっているのか、その耐性があります。
しかし、たとえスマホを使い慣れている人でも、
集中力が低下することには間違いがないため、
スマホを近くにおいての学習や作業には注意が必要です。
ところで、教室の前方に掲示物をなるべく貼らないというのが、最近の鉄則になっています。
10年ほど前は、前にも後ろにもベタベタ貼っていました。変わってきたと言うことです。
これは、掲示物が視界に入ると、授業に集中できないことが判ってきたからです。
ですから、モニター横にメモ帳があるだけで、きっと作業効率が落ちているはずです。
今回参考にさせていただいている要旨では触れられていませんが、
スマホの代わりにメモ帳を置いているのはそのためだと考えられます。
メモ帳なしの実験についても考察があれば、さらに面白い研究になると思います。
しかし、この実験から、メモ帳と比べ、
スマホが明らかに集中力を低下させていることに実験としての意味があります。
おそらく、電源を切っていても無意識に、「鳴るかも」、「振るえるかも」と
気になってしまうのでしょう。
ある意味で、ビクビクしてしまうのだと思います。
他人のスマホでもやはり集中力が低下しているので、おそらく、そういうことだと思います。
次に、スマホを使い慣れている人が、スマホに置かれた側の文字に気がつきやすくなるということは、
スマホがある方向を見る回数や時間が多くなることが考えられます。
この行動が意識して行われているわけではないと思われるので、
無意識に、スマホがある方向を向いてしまうことが考えられます。
つまり、常に、スマホをチラ見しているのだと思います。
そのため、スマホがない方向に対しては、注意力が低下するのでしょう。
※総合して、見つけるまでの時間が増えているので、スマホがある方向の文字を見つける時間が短くなるということは、
スマホが無い方の文字を見つける時間が長くなるということ。
これらの結果から、運転中の携帯電話の使用は禁止されていますが、
目に届く場所、たとえばダッシュボードの上や助手席などに置いておくだけで、
事故を誘発する可能性があるということになります。
これらは、単純に視界に入ると言うこともあるでしょうが、
視界に入らなくてもメールが来るかも・・・、SNSの通知が来ないか・・・
とついつい不必要にスマホを気にしたりすることがあります。
実際、しばらく電源を切っていても、気になって、つい電源を入れてしまいます。
そこにスマホがあるだけで、集中力がそがれるというのは納得できるところがあります。
以前、ある塾生に、
「絶対に、電源も入れないし、カバンにしまっておくから、スマホを塾に持ってきてはダメ?」
と言われました。
手に届く場所にスマホがあると思うだけで、気になって勉強に集中できなくなるから、
絶対に手の届かない場所(例えば家)に置いておいた方が、
あきらめがつくから良いと思うよ。と答えました。
電源を切ったスマホがあるだけで、集中できなくなると言うことなので、
これらの事例が証明されたと言えます。
まとめ
河原先生も指摘されていますが、
ながらスマホが注意力を分散させ、非常に危険であることは、
ポケモンGOなどの影響で周知の事実だと思います。
しかし、そこにスマホがあるだけで、注力が低下するというのは、
今まで研究がなされてこなかった分野です。
しかも、そこにあるのが、自分のスマホではなく、他人のスマホであっても、
気になって、集中できないというのは意外かもしれません。
そこにスマホがあるだけで、ついつい無意識にチラ見してしまいます。
それが他人のものでもです。
他人のスマホでも注意がそがれることから、周囲の人間の行動にも注意が必要です。
勉強している人の近くでスマホを出したり、
置きっぱなしにすることのないように気をつけなくてはいけません。
また、集中して作業をしたり勉強したりしたいときは、
スマホを視界に入らない場所にしまっておくことが重要なようです。
もっと言えば、簡単に手の届かない場所にしまいこんでおく必要があると考えられます。
つまり、中学生が勉強に取り組む場合、
勉強する部屋とは違う部屋にスマホを置いておく必要があるでしょう。
例えば、勉強時間はスマホを保護者が責任を持って預かり、別の部屋に置いておくなど。
そうするのが、スマホを買い与えた保護者の皆さんの責任だと思います。
たとえ面倒でも、買い与えたということは、そういうことなのです。
中毒であっても、なくても、そして、自分が利用していても、していなくても、
そこにあるだけで学習の妨げになるのがスマホのようです。
これってタバコに似ていると思いました。
あなたは、自分のお子さんに、タバコを買い与えるのですか?
購入を検討している場合は、この研究結果も参考に検討してみてください。
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