第37回 命に係わる中和反応

前回、イオンについて書いたので、ついでに中和イオンの交換について触れておきます。

中学校で習うイオンの話の最終章ですかね?
中学校で習うイオンの話は、他に電池がありますが、それはまた別の機会に。

酸・アルカリの正体

中和の話をする前に、まずは、アルカリについて、触れなければいけません。

物質が水に溶けると、電離して、イオンになる物質があります。
例えば、食塩や塩化銅などがそれに当たります。

このように、水に溶けることにより、イオン化する物質のことを電解質と呼びます。

電解質の水溶液は、電流を流すことができ、そのおかげで、電気分解を行うことができます。

さて、アルカリですが、こちらも、水に溶けたときに示す性質です。

時々、個体のものに酸性とかアルカリ性とか書いてあったり、
酸性食品とか、アルカリ性食品とか書いてあったりしますが、
それは、中学校・高校で習う酸性・アルカリ性とはあまり関係がないので、注意が必要です。

酸性アルカリ性ともに、水溶液の性質だと覚えておいてください。

時々勘違いするのが、次の内容。
アンモニアは、水に溶けるとアルカリ性を示します。また、二酸化炭素は水に溶けると酸性を示します。
アンモニアも、二酸化炭素も気体です。あくまで、水に溶けると・・・・なんです。
でも、アンモニアがアルカリ性で、二酸化炭素が酸性と気体そのものの性質だと思ってしまうんです。

どうでも良いような気もしますが、気を付けておきたい内容です。

イオンも、アルカリも、水溶液という共通のワードが出てきました。
何か、関係がありそうですね。

実は、水に溶けて酸性アルカリ性を示す物質は、全てが、電解質となっています。

例えば、酸性の水溶液の代表の塩酸は、塩化水素(HCl)が水に溶けたものですが、
水に溶けると、H+Cl-に電離します。

アルカリ性の代表の水酸化ナトリウム(NaOH)は、電離すると、Na+OH-に分かれます。

他にも、硝酸はNH3-H+、硫酸はSO42-H+、酢酸はCH3COO-H+に電離します。
これらは、酸性を示す水溶液です。

また、水酸化カルシウムはCa2+OH-、水酸化バリウムはBa2+OH-に電離します。
これらは、アルカリ性を示す水溶液です。

こうやって、並べてみると、共通点が見えてきます。

混ぜると・・・

さて、アルカリの共通点が見えたところで、これらを混ぜるとどうなるか考えてみます。

例として、水酸化ナトリウム塩酸を混ぜてみます。


塩酸のモデル

水酸化ナトリウム水溶液のモデル

混ぜると、水溶液中には、Na+OH-H+Cl-の4つのイオンが存在することになります。

この4つのイオンを元に戻そうとすると、NaOHHClに戻せるわけですが、
実は、もう1種類の組み合わせができます。

それは、NaClH2Oですね。NaClは前回紹介した通り食塩H2Oは常識ですね。です。

このように、酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液を混ぜると、不思議なことに、
H+OH-がくっついて、水になってしまいます。
そして、Na+Cl-が水溶液中に残ることになります。

この様子は、ちょうど、食塩を水に溶かしたときと同じになります。

食塩水を蒸発させて、水を取り除くと食塩の結晶が残ります。
同じで、混ぜた水溶液を蒸発させると、食塩が残ります。

つまり、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜると、食塩水になるんです。

不思議ですね。

このように、酸性の水溶液と、アルカリ性の水溶液を混ぜると、
それぞれのH+OH-がくっついて水ができることを中和と呼びます。

中和の副産物

中和は、あくまで、ができることを呼びます。

水ができるときに残った陽イオンと陰イオンがくっついてできる物質をと呼びます。
しお」ではなく、「えん」と読むので注意してください。

特に、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜた場合、できる塩(えん)は、
食塩ですから、一般的には塩(しお)なので、ややこしいです。
理科的には、食塩または塩化ナトリウムなので、混乱しませんが。

このは、混ぜる水溶液によって変わります。
例えば、硫酸水酸化バリウムを混ぜると、不溶性の硫酸バリウムができます。

これは、水に溶けないので、混ぜた瞬間、白い沈殿が起こります。

また、が気体になることもあります。
例えば、カビキラーはアルカリ性の洗剤です。サンポールは、名前の通り酸性の洗剤です。
この2つを混ぜると、中和反応が起こりますが、このときできる塩は気体です。
※実は塩ではないようですが、中和反応の副産物であることは間違いないです。

しかし、絶対に混ぜてはいけません。
このときできる気体は、有毒な気体で、命に係わります。

これらのパッケージに、混ぜるな危険と書いてあるのは、そのためです。


サンポール

カビキラー

ですので、よく授業で言うのは、「中和の勉強を怠ると死ぬよ。」と。
酸性の液体と、アルカリ性の液体を混ぜると、化学変化が起こり、
正体不明の塩が発生します。

この塩は、時として、自分の命を危険にさらす可能性があるのです。
冗談や誇張表現でもなんでもなく、死亡事故が多発している事例です。

なんで、勉強しなければいけないの?と聞かれると、この話をします。

結局・・・

最後にまとめます。

酸性の液体と、アルカリ性の水溶液を混ぜると、化学反応が起こり、
イオンの組み換え(交換)が発生し、水(H2O)と塩ができます。

この時できる塩が、必ずしも水に溶ける物質ではなく、
不溶性で、突然沈殿が起こったり、
気体が発生したりすることもあります。

そして、できる物質がに係わる有毒な場合もあるので、
絶対に、不用意に酸性の水溶液とアルカリ性の液体を混ぜてはいけません。

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