第21回 数学者はナルシスト

あの証明は美しくない

直木賞をとった、東野圭吾の「容疑者Xの献身」の一節です。

月9でも高視聴率を叩き出した、福山雅治主演の「ガリレオ」の
原作「探偵ガリレオシリーズ」の長編第1作です。
ガリレオは、映画化も2度されており、この「容疑者X…」は、
同題で、映画第1作として、公開されています。

  
容疑者Xの献身

東野圭吾さんは、理系出身のミステリー作家として有名で、
もちろん当塾でも、一目を置いています。
自習室には読み物として、探偵ガリレオシリーズはもちろん、
多数の東野作品を所蔵しています。

さて、「あの証明は美しくない」は、天才物理学者・ガリレオこと湯川学(福山雅治演)に
「本当の天才と呼べる男は石神だけだ」と言わせた石神哲哉(堤真一演)のセリフです。

劇中、天才数学者の石神は4色問題の証明に対して、「美しくない」と表現し、
もっと美しい証明を求め、取り組んでいる様が描かれています。
実際、4色問題の証明は、美しくないと言われているようで、
ちょっと検索してみると、色々な話が多数でてきます。

しかし、私たち凡人がこの「美しくない」というセリフをすんなり受け入れることが出来るわけもなく、
数学者の美的感覚について気になってくるわけです。

ところで、この4色問題の「美しくない」というのは、証明のしかたの話だそうで、
コンピューターを使って、ありとあらゆるパターンを全て潰して、証明したものだそうです。
もちろん、スマートさに欠け複雑怪奇分かりにくく長い
私たちのような凡人はもとより、天才数学者たちでも理解しがたい内容だそうです。

まぁ、その何というか、少なくとも、カッコよくはないという話です。

それの何がいけないの?と言う話になるんですが、
それを、石神は、「美しくない」と表現したんですね。

つまり、数学者っていうのは、「美しさ(カッコよさ)」を求めるも人種であるということなんです。
ゆえに、ナルシスト。

したがって、数学という学問は、美しさカッコよさを求める学問なんです。ナルシストな学問。

実は、こんな先入観をもって教科書を読んでみると、色々理解しやすい記述が見え隠れします。

例えば、1年生の文字の式の単元
文字式を書くときのルールに、アルファベット順に並べるといものがあります。

そもそも、式には意味があるので、アルファベット順に並べるというのは、本来間違いです。

みかんが5個入った箱が6箱あります。みかんは何個ありますか?
解答 5(個)×6(箱)=30(個)


これが、小学校の考え方です。これを中学生風に書きなおすと、

みかんがb個入った箱がa箱あります。みかんは何個ありますか?
解答 b(個)×a(箱)=ba(個)


と表すのが、中学生風小学生流です。
しかし、この問題、ba個と書くと、もちろん間違い。

でも、正直、どっちでも良くないですか?というか、
小学校で習ったことはなんだったの?って話になりせん?
もっと言えば、baの方が、現実をよく表していると思いませんか?

そこで出てくるのが、数学は美しさを求める学問であるということ。
実用的とか、効率的とか、そんなことよりも、
美しさを求める
ナルシスト集団であると思って読んでみます。

ba」と「ab」を比べてみて下さい。
おそらく、99.9%の人が、abの方が整って見えると答えると思います。


3年生の教科書にもあります。

ある数aを、ある数bの平方根で割りました。

これを式で表すと、となりますが、これは×になる・・・
理由は、有利化していないから。

これも、正直どうでもいいし、むしろ、の方が、意味はよく表しています。

しかし、これも有利化してとしてやらなければいけない。

理由は、こっちの方が美しいから。


結局のところ、「どっちでも良いじゃん」と思うけど、
はねられた時は、自分の回答と模範解答の両方を見せて、「どっちが整ってる?」とか、
「どっちが美しい?」なんて周りの人に聞いてみて下さい。
きっと、8〜9割の人は、模範回答の方がが美しいと答えます。
このとき、効率実用性などは考えても無駄です。美しさのみです。

結論
数学とは、美しさを求める学問。もちろん、中学生にも押しつけてきます。
数学の先生はナルシストだと思って、あきらめて対応しましょう。
ナルシストには、何を言っても無駄です。効率とか実用性とかとは無縁の生き物です。(笑)
だって、おしゃれに効率を求める人少ないでしょ?


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