第65回 小学生の放課後の過ごし方

今回は、前回の中学生の放課後の過ごし方に続き、小学生の放課後の使い方について考えます。

小中学生の放課後の時間

まずは、小学生が、平日、どのくらいの時間を自由に使えるのかを考えてみます。

最初は、睡眠時間。
諸説あると思いますが、高学年の理想は9時間とのことなので、今回はこれを採用します。

次に、学校での正課は、8時登校16時帰宅とし8時間とします。

そこから、入浴、食事を1時間とし、小学生にとって、平日の自由になる時間は6時間程度と考えます。
この6時間を、どのように過ごすべきなのかを考えてみたいと思います。

今回も、学力・学習状況調査の結果を元に考えます。

小6生の放課後の過ごし方と学力

学力・学習状況調査では、ライフスタイルに関係する質問がいくつもされていて、
その中で、放課後の時間の使い方に関する質問がいくつかあります。

この質問内容や選択肢が、文科省が想定する、小6生の放課後の時間の使い方と考えられます。

詳しくは、前回を確認してください。

さて、前回のコラムも踏まえて、最初に考えるのは、次の質問です。

放課後に何をして過ごすことが多いですか
  • 家で勉強や読書をしている
  • 放課後子供教室や放課後児童クラブ(学童保育)に参加している
  • 地域の活動に参加している
  • 学習塾など学校や家以外の場所で勉強している
  • 習い事(スポーツを除く)をしている
  • スポーツ(スポーツに関する習い事も含む)をしている
  • 家でテレビやビデオ・DVDを見たり,ゲームをしたり,インターネットをしたりしている
  • 家族と過ごしている
  • 友達と遊んでいる

文科省が想定する中学生の放課後の過ごし方は、こんな感じのようです。
複数回答で、選ばないと言うことも可能です。

例)放課後は、即帰って寝る→選べない

結果は、次のようになっています。


中学生の放課後の過ごし方(国立教育政策研究所のHPより)

1番は、家でTVやゲーム。次いで、友達と遊ぶです。他に目につくのは、家族と過ごす、
そして、さすが小学6年生、勉強も、上位に食い込んでいます。
おそらく、夕方は、友達とゲームをして、夜は、家族とTVやインターネットというのが、
標準的な小学生の放課後の過ごし方と言えそうです。

では、これらの選択肢と学力の関係はどうなっているのでしょうか?


中学生の放課後の過ごし方と正答率(国立教育政策研究所のHPより)

当たり前ですが、塾、家庭問わず、勉強をしていると答えた小6生の正答率が高くなっています。
そして、「習い事」と答えた小6生も、ほぼ同水準となっています。
前回紹介した、中学生とほぼ同じ結果です。

習い事をすることは、学力を押し上げるのでしょうか?

そして、学童保育には、どうも、学力を押し上げる効果は、あまり、期待できないようです。
地域活動に参加している小6生も、異常に正答率が低いことがわかります。これも、中学生と同じです。

活動時間と学力

では、どのようなことに、どのくらいの時間を使うと、学力がどうなるかを見て行きます。

学力・学習状況調査では、勉強、読書、部活動、テレビやビデオ・DVD、携帯電話やスマートフォン、テレビゲームのそれぞれと時間と正答率が公表されています。

まず、勉強時間と学力の関係です。

学校の授業時間以外に、普段(月〜金曜日)、1日あたりどれくらいの時間、勉強をしますか(学習塾で勉強している時間や家庭教師に教わっている時間も含む)
  • 3時間以上
  • 2時間以上、3時間より少ない
  • 1時間以上、2時間より少ない
  • 30分以上、1時間より少ない
  • 30分より少ない
  • 全くしない
(H29年 全国学力・学習状況調査 質問用紙より)


中学生の平日の勉強時間と正答率(国立教育政策研究所のHPより)

当たり前ですが、勉強すれば、勉強するほど正答率は上がるようです。
しかも、中学生とは違い、3時間以上が、極端に高くなっています。

読書に関しては、第63回で考察済みなので、結果だけ貼り付けます。


平日の読書時間と正答率(国立教育政策研究所のHPより)

残りは、学力を上げることはなさそうな3つです。

まずは、テレビ。

普段(月〜金曜日)、1日あたりどれくらいの時間、テレビやビデオ・DVDを見たり、聞いたりしますか(勉強のためのテレビやビデオ・DVDを見る時間、テレビゲームをする時間は除く)
  • 4時間以上
  • 3時間以上、4時間より少ない
  • 2時間以上、3時間より少ない
  • 1時間以上、2時間より少ない
  • 1時間より少ない
  • 全く見たり、聞いたりしない
(H29年 全国学力・学習状況調査 質問用紙より)



平日のTV視聴時間と正答率(国立教育政策研究所のHPより)

やはり、TVの長時間視聴は、学力を下げる要因になるようです。
しかし、全く見ない小6生の正答率は、1〜3時間、
テレビを視聴している小6生とほぼ同程度の正答率に下がります。

テレビを見るという行為自体に、学力を上げる力が少しはあると考えられます。
テレビには、報道という役割もあり、また、教養番組でなくても、何かしらを得ることが多いです。
「テレビの視聴=学力低下」と単純には、ならないことは間違いありません。

しかし、今時、テレビを全く見ないという中学生には、
何らかの特殊な家庭事情がある場合が多いとも考えられます。
その辺りが、大きく関係しているとも考えられます。

次は、携帯電話やスマートフォン

普段(月〜金曜日)、1日あたりどれくらいの時間、携帯電話やスマートフォンで通話やメール、インターネットをしますか(携帯電話やスマートフォンを使ってゲームをする時間は除く)
  • 4時間以上
  • 3時間以上、4時間より少ない
  • 2時間以上、3時間より少ない
  • 1時間以上、2時間より少ない
  • 30分以上、1時間より少ない
  • 30分より少ない
  • 携帯電話やスマートフォンを持っていない
(H29年 全国学力・学習状況調査 質問用紙より)



平日のスマートホンや携帯電話の使用時間と正答率(国立教育政策研究所のHPより)

利用時間と、正答率には、明らかな相関があります。
しかし、こちらもテレビ同様、全く使わない小6生が、1番正答率が高いわけではありません。
やはり、少しは、利用した方が良さそうです。
これも、中学生と同様の結果になっています。

繰り返しになりますが、機械に慣れておくことは、今の時代、悪いことではありません。
スマホは1日30分」を守らせる自信がある保護者の皆さんは、是非、買い与えて下さい。
成績が微増するかもしれません。
しかし、守らせる自信がない保護者の皆さんは、
買い与えると、成績が下がることはほぼ間違いありません

小学生の場合は、スマホは買い与えずに、キッズケータイで連絡をとれるようにしておくのが、
ベストのようです。

最後は、テレビゲームです。

普段(月〜金曜日)、1日あたりどれくらいの時間、テレビゲーム(コンピュータゲーム、携帯式のゲーム、携帯電話やスマートフォンを使ったゲームも含む)をしますか
  • 4時間以上
  • 3時間以上、4時間より少ない
  • 2時間以上、3時間より少ない
  • 1時間以上、2時間より少ない
  • 1時間より少ない
  • 全く見たり、聞いたりしない
(H29年 全国学力・学習状況調査 質問用紙より)



平日のテレビゲームのプレイ時間と正答率(国立教育政策研究所のHPより)

こちらは、スマホと違い、全くしないの正答率が一番高くなっています。
つまり、テレビゲームには、学力を上げる要因は、ほぼ無いと考えられます。

テレビゲームから得られるものは、無いようです。
こちらも中学生と同じ傾向です。

少し違うのは、数学に関して見られた、理数脳の形成に若干役立つかもしれないという可能性が、
小学生の算数では、見られません。
ゲームする時間があれば勉強しろと言うことでしょう。

結局、「勉強しろ!」ということ

こうやってデータを並べてみるとわかるのですが、学力を上げるためには勉強をすることです。
勉強だけは、時間が長くなれば、長くなるほど、正答率が上がっていきます。

しかも、どの教科も、3時間以上の正答率が、極端に高くなっています。
これは、3時間勉強をすると、極端に正答率が上がるのではなく、
4時間、5時間と、さらに長時間勉強している子どもたちが、たくさんいるということだと考えます。
第62回で考察した長時間の部活動と同じ考え方です。

つまり、中学生の国語に見られる頭打ちも、小学生には見られないというふうにも考えられます。
小学生は、勉強時間と、正答率にかない強い相関がみられると考えられます。

読書においても、国語のピークが1〜2時間、算数のピークが30分〜1時間と、
中学生よりも長時間のところに正答率のピークがきています。

つまり、中学生と比べ、部活動に時間がとられない分、
実質の自由になる時間が多いのが小学生の特徴です。
ある意味で、成績を上げるのに良いとされる読書や勉強を際限なく行うことができるのが、
小学生なのです。

さて、この結果が何を表しているのかと言うと、

人に与えられた時間は、1日24時間。この時間をどのように配分して、
過ごすかが個々人与えられた選択肢です。
いえ、小学生の場合は、どう過ごさせるかを親が決めてやらなければいけません。

小学生にとって、自由に選択できる時間は6時間前後です。

その6時間をどのように使わすかが、選択です。

データから読みとれるのは、

読書をは1日、1時間前後。スマホやインターネットは、1日30分。
ゲームはしない。しても30分以内。
テレビは1時間。アニメ2本か、ドラマやバラエティを1本です。

これで残りは4時間半です。

この4時間半を、全て勉強させれば、成績は、上がるということになります。

あとは、選択です。

結局どうやって勉強時間を確保するか

と言っても、そんな窮屈な思いをして、1日4時間半の勉強ができるか?と言われて、
できる小学生は多くはありません。

やるべきことは、やらなければいけませんが、それなりにして、やりたいこともしっかりやる。

友達と外で遊ぶの勉強です。
ミニ四駆で遊ぶことも、実は、勉強なんです。
ボールを投げたり、蹴ったり、打ったり・・・これも、非常に重要な勉強です。
体で覚える、そして体験することは、非常に大切です。
常識は、中学校以降の勉強に非常に密接に関わってきます。こちらも参照下さい。

あとは、やりたいことをやった分、その分、しっかりと勉強時間も確保する。

最後に、新聞を読むことも大事です。時間に余裕のある小学生のうちに、癖をつけておきましょう。
中学生になると、時間が無くて、読む暇が無くなります。
データを見ても、中学生は、新聞を読んでいる暇があれば、
勉強をしなさいという結果になっています。
こちらも参照してください

その辺りをしっかり理解して、適切に対応し、導いてあげるのが、
大人の役割であるような気がします。

こちらもチェック


Back    

Home